退職後の健康保険・住民票・NISAどうする?|1年以内の海外旅行者向け年収目安つき整理
2027年4月に夫婦で世界一周旅行に行く「けい」です。
旅行を計画する上で考えることは「退職して旅に出る以上、日本でかかる固定費はできるだけ抑えたい」ということでした。そこで、住民票を抜けば国民健康保険は脱退扱いになり、国保料は止まりやすいはず。さらに(タイミング次第では)住民税の扱いも変わるかもしれない——そう期待していました。
ただ、住民税は一般に「その年の1月1日時点で住民票がある自治体」で課税関係が決まるため、出国・転出のタイミング次第で想像とズレやすい点は要注意です。
ところが実際に調べてみると、ここに大きな落とし穴がありました。住民票を抜く(海外転出届を出す)と非居住者扱いになりやすく、NISAが継続できない/新規買付ができないなどの制約が一気に増える可能性があります。仮に「保有だけ継続」できたとしても、出国中は新規買付ができないことが多く、配当が出る商品だと課税口座に流れて“うまみ”が減るケースもあります。さらに、証券会社ごとのルールや手続き(常任代理人、期限、帰国届など)まで絡んでくるので、「保険料と住民税だけ見て住民票を抜く」という発想は思ったより単純ではありませんでした。
結局、最適解は保険料や税金だけでなく、投資(NISA)を含めたトータルで考える必要がある。そう感じて、今回あらためて整理してみました。
(内部リンク)私たちが世界一周に行く理由(動機)も別記事にまとめています → 「世界一周に行く理由(動機)」
※アイキャッチはAIで作成したイメージです(ChatGPTで生成)。実在の人物を意図したものではありません。
注意(必ず読んでください)
この記事の年収目安や比較は、分かりやすくするためのざっくり概算です。実際の保険料・可否・手続き期限は、自治体や加入している保険者(協会けんぽ/健保組合/共済)・世帯構成・控除・失業給付の有無などで変わります。
退職後の保険を決めるときは、必ず次で最終確認してください。
- 職場の総務/人事:退職日、資格喪失日、任意継続の案内・書類、在籍継続(休職)可否
- あなたの保険者(協会けんぽ/健保組合/共済):任意継続の条件・期限・保険料、扶養認定ルール(収入見込み・失業給付の扱い)
- お住まいの自治体(国保・住民税担当):国保の保険料試算、加入/脱退手続き、住民税の納付方法(普通徴収/一括等)
- 年金事務所(国民年金):海外転出時の扱い、在外任意加入の可否
- 証券会社(SBI/楽天など):非居住者の手続き、NISAの扱い(継続保有・新規買付可否)、常任代理人など
この記事の前提
- 旅行は 1年以内 で帰国する想定
- 海外転出届は 必須ではない 前提(ただし出す/出さないの比較はする)
- テーマは「退職後の健康保険」「住民票」「NISA」の3点セット
まず結論(迷ったらここ)
- 健康保険は、退職後は基本 「扶養」→「任意継続」→「国保」 の順で検討すると迷いにくい
- 国保には扶養がないので、夫婦2人が国保なら原則 2人分の保険料がかかる
- NISAを旅行中も“買い続けたい”なら、海外転出届は慎重に(非居住者になると新規買付できない/手続きが増える)
判断フローチャート(まず自分がどこに当てはまるか確認)
「扶養→任意継続→国保」の優先順は分かったけど、自分はどれ?
下のフローチャートで3ステップだけ確認すれば、検討すべき選択肢が絞れます。
詳細はこのあとのステップ1〜4で解説しますが、まずはざっくり方向感を掴んでください。
[▼ フローチャートをPDFでダウンロード(A4印刷対応)](リンク)
※ これはあくまで思考の出発点です。
最終判断は必ず各窓口(保険者・自治体・年金事務所・証券会社)で確認してください。
ステップ0:いま入っている「職場の保険」を把握
職場で加入中の健康保険は、だいたいこのどれかです。
- 協会けんぽ
- 健康保険組合(健保組合)
- 共済(公務員共済/私学共済など)
この違いで、任意継続の窓口・料率・書類が変わります(考え方は似ています)。
ステップ1:保険料は「いつの年収」で決まる?(ここが一番ややこしい)
同じ“健康保険”でも、参照する収入のタイミングが違います。
1) 在職中(会社の保険)
- 基本は いまの給与(標準報酬月額) で決まる
2) 任意継続(退職後に前職の保険を続ける)
- 退職時点の標準報酬月額 が基準
- 退職後に収入がゼロでも、保険料が急に下がるわけではない
3) 国民健康保険(国保)
- 原則、前年(1〜12月)の所得 をもとに翌年度の保険料が決まる
- 退職して今年の収入が激減しても、前年が高いと国保は高いままになりやすい
4) 配偶者の扶養(被扶養者)
- 多くは これからの収入見込み(恒常的収入) で判断
- 前年が高くても、退職して今後の見込みが下がれば扶養に入れる可能性がある
- ただし失業給付など“収入扱い”があるので、ここは保険者ルール確認が必須
ステップ2:退職後の健康保険は4択(扶養/任意継続/国保/就職)
選択肢A:配偶者の扶養に入る
- 保険料だけ見れば最強になりやすい
- 目安は「年収130万円未満」等(保険者により条件差)
選択肢B:任意継続(最長2年)
- 高所得帯で国保が重くなりそうな人に刺さりやすい
- 申請期限が短いので、退職後すぐ動く必要がある
選択肢C:国保
- 前年所得が低い・軽減対象・任意継続が高い人に向きやすい
選択肢D:新しい職場の保険
- 次の就職・転職が決まっていれば、ここが最優先(手続きがシンプル)
国保には扶養がない(=夫婦なら2人分)
国民健康保険には社会保険のような「扶養」の考え方がなく、加入者ごとに計算した保険料を世帯で合算して請求されます。
→ 夫婦2人が国保なら、原則 2人分の保険料 がかかります(片方が無収入でも均等割などが加算されます)。
帰国後に復職しない場合:2年目の保険料はどう考える?
1年以内で帰国しても、帰国後すぐに就職しない(または就職先が未定)ことは普通にあります。ここで効くのは、任意継続は“退職日起点で最長2年”、国保は “前年所得起点で翌年度に反映” というルールです。
任意継続を選んだ場合(2年目も基本は同じ保険料)
- 任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額で決まり、全額自己負担です。
- 加入できる期間は最長2年で、満了の翌日に資格喪失します。
- 途中でやめたい場合の扱いは保険者で異なるため、加入先の案内で確認してください。
(参考:協会けんぽ)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3270/
→ つまり、帰国後に無収入になっても、任意継続の保険料が急に下がることは基本ありません。
国保を選んだ場合(2年目に“急に安くなる”ことがある)
国保は原則「前年所得」で計算されます。なので、退職して収入が落ちた年の翌年度に、保険料が下がりやすい構造です。
イメージ(ざっくり)
- 退職直後〜帰国まで:前年が高所得だと国保は高い(想定外になりやすい)
- 帰国後〜翌年度:退職した年の所得が低いほど、翌年度の国保が下がりやすい
→ 「最初は任意継続で凌いで、翌年度(保険料が下がる年)から国保へ切り替え」みたいな発想が出てきます。
【概算】国保 vs 任意継続:年収別「保険料いくら?」早見表(2人世帯)
ここは質問が多いので、金額感を出します。
この表の前提(ざっくり試算)
- 40歳未満の2人世帯
- 国保は「東京23区の一例」の計算式で近似(自治体差あり)
- 任意継続は「協会けんぽの一例」で近似(健保組合・共済は料率や上限が別)
- ここでは比較の方向性を見るための概算
① 片働き(配偶者の所得0円)の場合:世帯年額
| 夫の前年給与収入 | 国保(2人分) | 任意継続(夫のみ)※配偶者を扶養にできた場合 | 任意継続(夫婦それぞれ) |
|---|---|---|---|
| 200万円 | 約22.1万円 | 約19.8万円 | 約39.6万円 |
| 300万円 | 約29.4万円 | 約29.7万円 | 約59.5万円 |
| 400万円 | 約37.1万円 | 約38.1万円 | 約76.1万円 |
| 600万円 | 約53.7万円 | 約38.1万円 | 約76.1万円 |
| 800万円 | 約71.8万円 | 約38.1万円 | 約76.1万円 |
| 1,000万円 | 約92.0万円(上限) | 約38.1万円 | 約76.1万円 |
| 1,200万円 | 約92.0万円(上限) | 約38.1万円 | 約76.1万円 |
| 1,500万円 | 約92.0万円(上限) | 約38.1万円 | 約76.1万円 |
※「任意継続(夫のみ)」は、配偶者が被扶養者の条件を満たせた場合の目安です。
② 共働き(夫婦が同じ年収)の場合:世帯年額
| 夫婦それぞれの前年給与収入 | 国保(2人分) | 任意継続(夫婦それぞれ) |
|---|---|---|
| 200万円 | 約31.3万円 | 約39.6万円 |
| 300万円 | 約45.9万円 | 約59.5万円 |
| 400万円 | 約61.3万円 | 約76.1万円 |
| 600万円 | 約92.0万円(上限) | 約76.1万円 |
| 800万円 | 約92.0万円(上限) | 約76.1万円 |
| 1,000万円 | 約92.0万円(上限) | 約76.1万円 |
| 1,200万円 | 約92.0万円(上限) | 約76.1万円 |
| 1,500万円 | 約92.0万円(上限) | 約76.1万円 |
この表から言える“ざっくり結論”
- 高所得帯ほど 国保は上限に張り付きやすく、任意継続のほうが有利になりやすい
- 片働きで配偶者を扶養にできるなら、任意継続はさらに強い(国保は扶養がないため)
- **中間帯(年収300〜500万円前後)**は自治体差・家族構成差で逆転しやすいので、最終的には
- 自治体の国保試算
- 保険者の任意継続保険料
ステップ3:住民票はどうする?(抜く/抜かない)
住民票を残す(海外転出届を出さない)
- 手続きが少なく、帰国後もスムーズ
- 国保を選ぶ場合は、原則として保険料が発生し続ける
- 住民税の通知・各種郵送物を受け取りやすい
住民票を抜く(海外転出届を出す)
- 国保に入っている人は、基本的に国保の資格喪失(=国保料が止まりやすい)
- ただし、年金・マイナンバー・税・金融口座など影響範囲が広い
海外転出届を出すと何が変わる?(国保・扶養・年金・郵送物)
- 国保:資格喪失になることが多く、国保料は止まりやすい一方、一時帰国で日本の医療機関にかかると自己負担が重くなる可能性あり。海外療養費なども期待しにくい
- 会社の健康保険(本人):住民票を抜いたから即脱退とは限らないことが多い(ただし退職するなら別)
- 任意継続:住民票を抜いても保険料は下がらない。扶養の手続きが増える/条件が変わる可能性は保険者次第
- 配偶者の扶養:保険者によっては「国内居住要件」や例外手続きが絡むことがある
- 年金:海外転出で国民年金は強制加入の対象外になり、必要なら在外任意加入という考え方がある
- 郵送物・手続き:住民税通知、金融機関の書類、本人確認など、国内の受け取り体制が必要になることが多い
住民税はどうなる?(誤解しやすいポイント)
住民税(個人住民税)は、一般にその年の1月1日時点で住民票がある自治体で課税関係が決まります。
- 1月1日時点で住民票が残っていれば:その年の住民税は課税される方向になりやすい
- 1月1日より前に海外転出届を出して住民票を抜けていれば:その年の住民税の扱いが変わる可能性がある
ただし、実際の納付方法(普通徴収・一括・残額)や、転出のタイミングによる扱いは自治体で差が出ることがあるので、ここは必ず自治体の住民税担当で確認してください。
ステップ4:NISA・証券口座(SBI/楽天)で起きやすいこと
ここは今回いちばん混乱しやすい部分なので、結論を先に書きます。
- 海外転出届を出して「非居住者」扱いになると、NISAの新規買付は基本できません(制度上の制約)
(参考:金融庁のNISA資料)
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf - そのうえで、証券会社ごとに「旅行・留学は不可」「海外転勤なら継続保有可」など運用差があります。
まず大前提(超重要)
- 海外転出届を出さない(住民票を残す):通常は「国内居住者」として扱われやすく、NISAの積立・買付を継続しやすい
- 海外転出届を出す(住民票を抜く):非居住者扱いになりやすく、NISAが「買えない」「閉鎖される」「保有だけ(一定条件)」などの方向へ寄りやすい
SBI証券(結論:旅行だとNISA継続が厳しい)2026年3月現在
SBIは公式に、留学や旅行等の理由で出国する場合、NISA口座継続利用は制度上できないと明記しています。
また非居住者の間は原則取引できず、保有できる商品が限定される旨がFAQにあります。
https://faq.sbisec.co.jp/answer/5ebe28f4d31ea500111ebcbe
→ つまり 「海外転出届を出す(非居住者)」×「旅行」×「SBIでNISA継続」 は、計画が崩れやすい組み合わせです。
楽天証券(結論:海外転勤等で例外手続きがある。ただし旅行で適応されるかは別問題)2026年3月現在
楽天は「海外転勤など」のケースで、法令要件を満たして 非課税口座継続適用届出書 を出すことで、NISA口座内で継続保有できる商品を拡充したと案内しています(ただし法令上、出国期間中の新規購入は認められていない、とも明記)。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20241017-02.html
→ 楽天は「海外転勤等の要件を満たせる人」は“保有の継続”がしやすい方向に動いていますが、旅行(自己都合の長期滞在)で同じ扱いになるかは別問題です。
海外転出届は出すべき?出さないべき?(早見表)
| あなたの状況 | 海外転出届(住民票) | 理由(得しやすい/詰まりやすいポイント) |
|---|---|---|
| 旅行中もNISAで新規買付したい | 出さない(残す) | 非居住者だと新規買付が止まりやすい/手続きが増える |
| 夫婦どちらかが扶養に入る予定 | 出さない(残す) | 住民票を抜くと国内居住要件や例外手続きが絡みやすい |
| 任意継続でいく予定(国保を避けたい) | 出さない(残す) が基本 | 住民票を抜いても任意継続の保険料は下がらない |
| 国保で、国内受診もほぼしない想定 | ケース次第 | 国保料が止まる可能性はあるが、一時帰国の医療が不利 |
| 1年以上の海外居住(生活拠点が海外に移る) | 出す(抜く) | 原則こちら。影響範囲が広いので事前準備が必須 |
出発前チェックリスト(退職する人向け)
退職前(2〜3か月前)
- いまの保険が「協会けんぽ/健保組合/共済」どれか確認
- 任意継続の期限と必要書類を確認
- 扶養に入る可能性があるなら、収入見込みの作り方と必要書類を確認
退職直後(ここが勝負)
- 任意継続を出すなら期限内に提出
- 国保にするなら加入手続きと保険料試算
出国前(運用面)
- 住民税の通知を受け取れる体制(家族受取・転送など)
- 海外旅行保険(治療費・救援者費用・搬送)は別で設計(別記事にします)
まとめ
- 保険料が参照する収入のタイミングが違う(在職:今/任意継続:退職時/国保:前年/扶養:今後見込み)
- 国保には扶養がないので、夫婦なら2人分の負担になりやすい
- 住民票を抜く判断は、保険料・住民税だけでなく NISA・証券口座の制約もセットで考えるのが安全
